メディア掲載

2024.04.15

 敵か?味方か?「倹約遺伝子」

「正月食べ過ぎてしまい、体重かなり増えてしまいました。一度増えるとなかなか元にもどらないんですよね・・・」「食べる量は変わらないのだけど、年々体重が増えてしまって・・・」。 最近の診察室での患者さんとの会話です。
遥か昔、人類は飢餓と戦っていました。十分な食料の確保が困難な環境で、少しでも余ったエネルギーを脂肪として蓄えてくれる遺伝子、いわゆる「倹約遺伝子」を獲得する事で飢餓に備える体質を獲得、生き延びてきたのです。
 人が食べ物を蓄え、いつでも空腹感を満たすことができるようになったのは、長い歴史の中ではほんの一瞬前のことです。飢餓の時代には生存のために有利な条件であった倹約体質なのですが、飽食と運動不足の現代日本社会では肥満を招く不利な遺伝子となってしまったのです。
しかし、肥満の原因はすべて遺伝子によるものではなく、遺伝因子が3割、残りが生活習慣などの環境因子といわれています。同じ遺伝子を持つ一卵性双生児がともに肥満になる確率は68%という報告があります。100%ではありません。仮に太りやすい遺伝要因を有していても、食生活などの生活環境の改善を心掛ければ太らずに済むということです。地道な努力をせずに遺伝のせいだと片づけてしまうと、遺伝子に怒られてしまうかもしれませんね。